ボランティア
2年10ヶ月後のJヴィレッジ
宴会翌日、お手伝いのために残ってくださった方たち。うれしい申し出、心から感謝です!
早朝からJヴィレッジ内「ハーフタイム」にエプロンと三角巾持参来てくださった皆さん、まずは広い店内のお掃除です。掃除機、モップ掛けだけでも3人がかりで1時間はかかります。これだけで既にくたくたです(笑)。でも、これからが本番! みんながんばって!
続いて恒例のジャガイモの皮むき! 何個という単位ではありませんよ。ダンボール数箱分、ひたすら皮むきです。人参も玉ねぎも10kg単位で切っていきます。
玉ねぎを炒めるのも重労働! とにかく、普段目にすることのない分量なので、何かと力がいります。なんだか学校の給食室のよう。
「今日のお弁当のメニューは何ですか?」
「まだ決めてない」
「(一同)え!?」
「なんにしようかな〜。よし、ハンバーグ!」
というわけで、ハンバーグ作りに今決定! 大量のハンバーグ、冷凍食品を使えば簡単ですが「手作りのハンバーグの方がおいしいに決まってる」と西。そりゃそうです! 手間暇かけてみんなでハンバーグを作って、一つずつフライパンで焼いていきます。
最近のお弁当は安いですよね。
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おいしくて安いのが本当にいいのか、ハンバーグをこねながら毎日の「食べる」ということについて、つい思いを巡らせてしまいます。
東日本大震災後のJヴィレッジは、皆さんもテレビやネットの報道でご存じのとおり、とても物々しい雰囲気でした。原発事故収束のための拠点として、 防護服を着た大勢の方が施設内の至る所に溢れ、戦車も停まっていたり‥‥。Jヴィレッジが現在もあのままだと思い込んでいる方もいるかもしれません。
あれから2年10ヶ月、Jヴィレッジも少しずつ、少しずつ、変わってきています。2013年6月で防護服を着た作業員の方たちの姿はもうありません。1日 3000人以上の方がJヴィレッジで着替えて、線量計を持って、バスで福島第一原発まで移動していましたが、その拠点は今、原発の方に移っています。現在 も東京電力の復興本社が入っていて、まだサッカーができる状態ではありませんが、でもサッカーの面影はJヴィレッジのそこら中にまだたくさん残っ ています。
───いつかまた、必ずJヴィレッジにサッカーが戻ってくる。
そういう希望が、Jヴィレッジのそこら中に感じられます。そのことを、もっと知って欲しいといつも思います。特に、サッカーファンの皆さんには。
さあ、お昼ごはん! リクエストにお応えして、揚げたてのトンカツを載せたカツカレー!
みんなが下ごしらえしてくれた材料は、おいしく調理されて夕方配達のお弁当やハーフタイムの夜メニューになりました。手伝ってくれて本当に助かりました! ありがとうございました。
Jヴィレッジを後にするとき、震災前から飾ったままになっている各チームのサインに見入る皆さんの姿が。キャンプしていた当時のことを思い出します。この壁一面、東電や福島第一原発で働く方たちに宛てて寄せられた応援メッセージなどがびっしり貼られていたこともありましたが、今は元のJヴィレッジにほんの少し近づいています。
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サムライブルーディナー!(1)
11/4(月・祝)、「サムライブルーディナー」が開催されました。この日アルパインローズに集まったのは、サッカーファン約70名! なんと、一番遠い方は北海道からのご来店! 他にも神戸や静岡、東京、宮城、全国からたくさんのお客さまがいらっしゃいました。ありがとうございました!
広野に到着したピンクの大型バスに乗っていたのは、「東北に1mmでも近づき隊バスツアー」参加者の皆さん。サッカー日本代表サポーター「ちょんまげ隊」隊長のツンさんも、ちょんまげに甲冑姿でした。もはや、ちょんまげがないと誰だかわからないくらい、この姿がすっかり定着しています(笑)。このツアーは、いわゆる観光旅行ではありません。東日本大震災の被災地を巡って、子供たちとフットサル大会を開催したりするなど、自分の目で見て感じるツアーで、募集してすぐ満席になったようです。こうして震災後も、東北に意識を向けて、今を知ろうと積極的に活動する方たちがいることに励まされます。
バスツアーには参加せず、サムライブルーディナーのためだけにここ広野に来て下さる方もたくさんいらっしゃいました。石巻の仮設住宅から来てくださったご家族、東京からバスと電車を乗り継いで来て下さった方、福島の大学に通う息子さんを誘って埼玉から来てくださった方、アルパインローズの常連さんも! 前日フルマラソンを完走して鎌倉からやってきた方もいましたよ。すごい! 本当にうれしい限りです。大満足していただけるように、がんばらないと。
普段から人手の足りないアルパインローズ。ディナーを成功させるために、2日前からボランティアの女の子たちが来てくれました。助かります! 乾選手のユニフォームを着たまいちゃんは、唐揚げ担当。そういえば、前回のボランティアではカツサンドのカツを150枚、えびフライもいっぱい揚げていたのはまいちゃんでした。ノンちゃんは、厨房ではドイツのチーム「シャルケ」の内田ユニフォーム、ディナーでは日本代表の内田ユニフォームに着替えていました。気合いが表れてますね〜。東京から本当にありがとう。
アルパインローズのある広野町二ツ沼総合公園は、 国際公認のパークゴルフ場やサイクリングロード、バーベキュー施設などのある広大な公園です。震災後の除染作業は コンクリートを剥がすなど、かなり大がかりだったため、再開にだいぶ時間がかかってしまいました。この日は、多くの方が待ちに待ったパークゴルフオープン日。というわけで、お弁当の大量注文ありがとうございます! さあさあ、急がないと間に合いません。ゴルフの合間にお弁当を食べる皆さんの姿を想像しながら、全力で作ります。
どこまでもおにぎり!\(^O^)/
しかし、見とれてる時間はありませんよ!
おいしそう〜。つまみ食いしたかったなあ。
おにぎり弁当だけではありません。サンドイッチ弁当も並行して作っていきます。配達の時間と、ランチの時間が迫ってきます。ディナーの準備もまだまだこれからです。
間に合うかしら!
バスツアーのみんなは、順調に福島に向かってるかしら!
お弁当が一段落して、Jヴィレッジ内「アルパインローズ」の厨房に入ります。ご存じの方も多いと思いますが、元々「アルパインローズ」は今の場所ではなく、Jヴィレッジの中にあったのです(「ハーフタイム」は、もう一つ備わっていた厨房で震災後に開店しました)。宿泊しているサッカー少年たちや、地元の方たちで賑わう人気のレストランでしたが、今は東電の会議などに使われているため、厨房は震災後そのままになっています。Jヴィレッジがオープンした1997年から、ここが西の職場でした。「一度全部片付けた」と話す西、それでも内部は爪痕が残ったままで時間が止まっているようでした。調理器具の中から、地元のおばあちゃんが書いてくれた川柳が出てきました。このおばあちゃんも、この場所でまた西のランチを食べるのを心待ちにしていると、いわきの仮設住宅で話してくれました。
みんなが、Jヴィレッジにサッカーが戻ってくる日を待っています。
暗いニュースばかりのこの場所に光が差し込むとすれば、サッカーの力を借りることかもしれません。今日はそんな気持ちで皆さんをお迎えします。
みんなの力で
10/19(土)は広野町で「ふたばワールド」が開催されました。3000人を越える来場者で、出店したアルパインローズも大盛況でした。大型バスも続々と集まっていて、久しぶりに再会する姿もあちこちで見られました。双葉郡の8町村から避難した方で、震災後初めて地元を訪れた方も多かったようです。
この日、お店を手伝ってくれたのは、東京、千葉、神奈川から集まってくれたボランティアの女の子たち8名。車2台で会場入りしてすぐ、特製「玉ちゃん焼き」を手伝ってくれました。早朝からありがとうございます! 西は会場で開催された「大鍋復活プロジェクト」で、すいとん1000人分も掛け持ちです。
(左)Jヴィレッジ取締役統括部長、小野さん。いつもお世話になっております!
(右)広野町の山田基星町長も来てくれました! ありがとうございます!
15時にイベントが終わり撤収作業を終えたら、Jヴィレッジ内「ハーフタイム」で夜の営業と、お弁当の仕込み作業です。なんと! 翌日のお弁当注文は 500個以上、カツサンド弁当150個、翌日のランチ予約は100名様以上! その前に、17:30には「ハーフタイム」にお客さんが来ちゃう! 時間との勝負が始まります。急げー!
片っ端からじゃがいもの皮を剥く人、キャベツを切って切って切りまくる人、泣きながら玉ねぎと戦う人、ピーマン担当、トンカツ150枚揚げる人、お店の様子を見てフライドポテトがなくなったらポテト追加! 材料が足りない! 買ってきて! 私が行きます!という具合で、いわき市まで買いに走る人。これぞ、てんやわんやです(笑)。厨房はいつもこんな戦いが繰り広げられているのでしょうか。恐ろしい!
お弁当なんて1つ作るのも大変なこと。500人分のお弁当なんて、まるで想像もつきません。大鍋3杯分のじゃがいもはポテトサラダ300人分! そんな量のじゃがいもを目にするのも初めてです。蒸し器で蒸し上がったホクホクのじゃがいもを潰すのも、正直1分でしんどくなりました(笑)。全身の力を込めてガンガン潰します! 翌日の筋肉痛は言うまでもありません‥‥。
カツサンド班はとにかく黙々と手を動かすのみ! トンカツ150枚カラッと揚げたら、冷ましている間に辛しバターを練り練り。これまた見たことのない分量です。その間に、食パン300枚を片っ端から積んでいきます。もう夢に出そうなパンの山! 辛しバターを塗り、キャベツの千切り、トンカツ、特製ソースをサンドしたら、パンの耳をバンバン切り落としていきます。すべてに、美しく、おいしく作るコツがあります。それをスタッフの香さんが丁寧に教えてくれます。
パンを切るときは、バイオリンを弾くように包丁をスーッと引く
美しいカツサンドは、パンの向きが大事
マスタードソースのおいしい配合
パンの四隅にキャベツの千切りが入っていないと美しくない
辛しバターはちょっと多めがおいしい
といった具合。やっぱり味見しないとわからない、ということで最初のひとつはみんなで食べてみることに。なるほどなるほど、これはおいしい! でも、ちょっとしょっぱい(笑)。そしてキャベツが足りない。勉強になります! あ!ひとつ食べちゃったから、トンカツが足りなくなっちゃった! 追加で1枚揚げて〜。 この日、カツサンド弁当がすべて完成したのは、夜22:00を過ぎた頃でした。「得意料理はカツサンド」と言えるほど作りましたよ!
一方、西もまたひとつひとつの食材の扱い方を隣で教えていました。ナポリタンに使う玉ねぎの切り方と、カレーに使う玉ねぎの切り方もその都度、お手本を見せてくれます。エビしんじょうの丸め方など、和食の基礎も直接指導です。こんなふうに和食のプロから手取り足取り教わる機会はなかなか貴重な経験かもしれません。みんな、お嫁さんに行ったときに役立ちますように!
下ごしらえが終わって、静まりかえった「ハーフタイム」で遅い晩ごはん。この日、手伝ってくれた女の子たちはサッカーファンとあって、西のリクエストで始まった自己紹介タイムでは好きな選手の告白も。清武選手、長谷部選手、中村憲剛選手の名前が続きましたが、やっぱり一番人気は内田選手でした! この8名のうち4名は地元出身の女の子たちでした。富岡町、双葉町、浪江町、大熊町。すべて原発事故の影響を受けた町です。双葉高校の同級生たちは、地元のために力になりたいと、このボランティアに応募してくれました。西はお礼の言葉と共に、ここ福島で料理を続けることの決意というか、強い強い覚悟のようなものを語りました。じっと聞き入る女の子たちに、思いが伝わったかなと思います。
みんな、朝から夜遅くまで弱音を吐くこともなく、本当に一生懸命手伝ってくれました。円卓を囲みながら、西も奥さまの香さんも大きく息をつきながら「いやあ、今日は本当に助かった〜」としみじみ。ちょっとお酒も入って、お二人の馴れ初めなんかも聞いちゃいました。ひゅーひゅー。
さて、明日も早起き!
翌20日(日)は、朝から500個以上のお弁当の準備、配達に出るスタッフ。そして、Jヴィレッジからアルパインローズに移動して、いよいよ怒濤のランチタイム! 続々とご予約のお客さまがいらっしゃいます。お店はあっという間に100名様以上の満席状態に。厨房はというと、昨日に引き続き大変な騒ぎです。お客さまの食事の様子を見ながら、次々と料理を運びます。そんな中、ひょっこり厨房にやってきては「西さんにちょっと挨拶したい」とおっしゃるお客さまが。直接声をかけていただけるのはありがたいことです! 「おいしかったよー!」「また来るね」と雨の降る中帰っていくお客さまに何度も声をかけていただいて、心がほっと温かくなるのを感じました。
全力投球でミッション完了!
ご来店いただいた皆さん、ありがとうございました。
そして、東京からお手伝いに来てくださった皆さん、ありがとうございました。
西は日本代表チームに帯同して、セルビア、ベラルーシから帰ったばかりでした。朝、成田空港に到着してお店に直行。それからずっと睡眠時間もままならないままこの週末を迎えたのでした。11月にはベルギーの遠征に帯同します。海外遠征の合間の一番の山場をみんなで力を合わせて乗り越えました。後日、手伝ってくれた女の子たちからのメールには、あの過酷な労働にも関わらず、
「楽しかったです」
「いただきます、の重みを実感しました」
「貴重な経験をさせていただきました」
「またぜひお手伝いに行きたいです」
とのうれしい声が(泣)。なんてできたお嬢さんたちでしょう! いきなりの現場にも関わらず、自分から仕事を見つけて、声を掛け合って働いて働いて、そして、また力になりたいだなんて! 西も香さんも、感激していたのは言うまでもありません。(みんな飲食店でのアルバイト経験があったのかしら。)
ちなみに、Jヴィレッジのある楢葉町は、2012年8月に警戒区域が解除になり、自由に出入りできるようになりました。ただ、ライフラインがまだ整っていませんし、除染で出た放射性廃棄物がいっぱい詰まった「黒い袋」が町中に増える一方です。アルパインローズのある広野町はというと、住民の1割程度の方が、自宅に戻ってきていますが、生活するにはなかなか困難な状況です。そうした地域ですが、お仕事でこの地に来る方は大勢いらっしゃいます。定期的に自宅のお掃除をしていつでも帰れる準備をしている地元の方もたくさんいらっしゃいます。この場所で、あたたかくておいしい食事を楽しみにしてくれる人がいるから、また明日もがんばらないと!